「性教育」について、みなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
「性について語ることは恥ずかしい」「あまり早い段階から意識させたくない」
そんな風に、少し保守的な考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかしネットやSNSで簡単に性情報に触れられるようになった今、間違った情報や知識が誘発する性トラブルは年々増えているのです。「もしもわが子が」なんて考えたら、心配でしょうがないですよね。このネット時代に、学校や親は「性教育」についてどのように向き合ったら良いのでしょうか。
今回は、世界の性教育への取り組みを参考にしながら、世界と日本の違いについてスポットを当てていきます。
Contents
世界の性教育について知ろう!
実は性教育には、世界基準でのガイダンスがあることをご存知でしょうか?
それが2009年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)が発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」です。ヨーロッパ各国やアジアでもこのガイダンスが性教育の方針となっており、世界的なスタンダードとして認知されています。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスとは
ガイダンスでは5歳〜18歳を4つのグループに分け、学習内容を設定しています。
例えば5〜8歳では赤ちゃんが生まれる過程を知り、9〜12歳ではどのように妊娠するのか、意図しない妊娠を防ぐにはどうしたら良いかなどを学びます。
また性行動だけではなく、男女平等やジェンダー理解、人権教育なども含めて構成されているため、子どもたちは自然と「性は恥ずかしいものではなく、生きる上で大切な要素である」という考え方を身につけることができるのです。
性の権利宣言とは
性の健康世界学会(WAS)によって言明された「性の権利宣言」も、性教育を考える世界の基準といえるでしょう。これは人々の「性の健康」を守るための宣言で「平等と差別されない権利」「思想、意見、表現の自由に関する権利」「あらゆる暴力や強制・強要から自由でいる権利」など、16の権利が掲げられています。
この宣言からも分かるように、「性教育」とは「性行動」のみに対し使われるものではなく、基本的な人権の重要な部分を学ぶものとして重要視されているのです。
世界各国の性教育を違いを紹介
とはいえ、世界は広く、性教育への取り組み方も国によって様々です。オランダ、アメリカ、インドの性教育を見てみたら、そこには大きな差があることが分かりました。
世界が注目する性教育・オランダ
オランダでは早くて4歳から性教育をスタートします。
ただし、いきなり性行為について教えるのではなく「水着で隠れるゾーンは、簡単に他人に見せたり触らせたらいけないよ」「じゃぁどんな場面なら見せてもいいの?」というようにまずは他人との関わり方を知り、そして不快な時は「嫌だ」と言っても良いことなどを学びます。
小学生になるとセックスの仕組みや避妊・感染症リスクと言った具体的な性教育が始まるのですが、模造ペニスを使用してコンドームの付け方を実践的に学んだり、家庭でもセックスについて包み隠さず教えるなど、オランダの性教育はとてもオープンです。日本とは違い「セックス=タブーではない」という空気があるため、子どもたちは自然と幅広い知識を身につけていきます。
意外に保守的? アメリカの性教育
アメリカには50もの州がありますが、その半分以上で性教育が義務付けられています。
避妊の方法や感染予防についても授業でしっかりと教え、高校では避妊のためにコンドームを無料でもらえる制度も。また授業では性的虐待・性的暴行の被害女性に密着するドキュメンタリーを見て性トラブルについての問題意識を育むなど、健全な性についてきちんと学ぶ環境が整っています。
しかし性についての「考え方」がオープンかというと、実はそうではありません。
アメリカで影響力の強いキリスト教の考えでは結婚前のセックスはNGとされており、結婚前のセックスを禁じている家庭も少なくないのです。また、性についての授業を行うには必ず保護者の了承が必要で、もちろん了承が得られなければ子どもは授業に出なくて良いことになっています。
様々な文化圏の人が一緒に暮らしているアメリカだからこそ、同じ国の中でも教育に差があって両極端なのが特徴です。
性はタブーなインド
一方インドでは、性教育を行うことで性が乱れるという考えがあり、結婚前に性について知ることはモラル的に良くないとされています。そのため大人でも性について正しい知識を持っている人は少なく、親から子どもへの性教育も難しいのが現状です。
インドでは昔から女性の「生理」を不浄とする観念があります。そのため一部の地域では、生理中の女性は外出を控え、他人との接触を避けるために納屋に閉じこもるという風習が今も続いているのです。
日本でも学校での性教育についてアップデートが必要とされていますが、インドの学校で性教育がスタートするのにはもう少し時間がかかるかもしれません。
日本の性教育との違いとは?
文化や宗教によって差はありますが、ガイダンスを指針として各国の性教育はどんどんアップデートされています。
しかし、先進国である日本はどうでしょうか。
日本では「性教育=性行動」というイメージがまだまだ強く、具体的な話はタブーとする空気感がありますよね。実際に、日本の学校の授業では性行為について取り扱うことはありません。避妊方法も、きちんと教えてくれる学校は少ないでしょう。
子どもたちが性情報に触れる機会は何倍にも増えているのに、日本の性教育はほとんどアップデートされておらず、世界と比べると「性教育後進国」として位置付けられているのです。
生きていくのに重要な教育=性教育
子どもたちを性トラブルから守るために必要なのは、恥ずかしいものとして「性」を遠ざけることではなく、生きていくのに重要な要素として正しい知識を伝えていくことではないでしょうか。
性について語るのは恥ずかしい、という私たち大人の認識が「子どもの性について学ぶ権利」を奪ってしまっているのかもしれません。
世界の取り組みを参考に、大人の私たちこそ「性教育」をアップデートしませんか。そして子どもが自分の体や心を守れるように、家庭でもポジティブな性教育を行っていきましょう。